協会けんぽ×建設業界
「健康事業所宣言」がもたらす企業価値の向上
現場仕事に従事する方が多く、自身での健康の確保が前提となりがちな建設業界。 今回は、その建設業界において、いち早く健康経営に取り組まれている大和電設工業株式会社と雅豊建設株式会社の担当者の方から、協会けんぽ京都支部の広報担当がさまざまなお話をうかがいました。
建設業界の健康課題
建設業界の男性は、「喫煙」と「飲酒」が課題
建設業界で働く従業員の生活習慣
建設業界の健康課題は、今も昔も「喫煙」と「飲酒」ですか?
喫煙はやっぱり多いと思います。飲酒も多いですね。
現場(外)で動いているからか、仕事が終わってからは運動しない傾向にもあります。それもあって、よけいにお酒を飲み過ぎてメタボになっていく人が多くなるのかなと思います。
当社は昔に比べたら、だいぶ減りました。とくに若い人はお酒を飲まないですね。喫煙者も当社では社員の3割に満たないですが、喫煙や飲酒の心配よりも、不規則な勤務形態による健康不安が多いです。当社の社員たちは深夜や土日出勤が多く、不規則な生活への健康管理が問題だと思っています。
「喫煙」「飲酒」について何か働きかけをされていますか?
喫煙について、現場での禁煙を徹底しています。
他にも、健康診断の結果を見て、直接本人に確認したり声がけをするなどの働きかけをしています。とくにメタボが増えてきているので、太りすぎの人には、食事についてのアドバイスもしています。人から「数値高いよ」って言われると意識が変わるんじゃないでしょうか。
喫煙、飲酒の指導を含んだ特定保健指導を対象となった人には毎年受けさせています。
協会けんぽとの出会いが健康課題の克服へ
協会けんぽの健診が健康への扉に
健診の受診率はどうですか?
以前は、協会けんぽに健康診断があることを知らず、事業所の健康診断しか受診していませんでした。事業所の健診よりも、協会けんぽの健診の方が検査の項目も多く、みんなの健康をしっかりと見てもらえる。そのうえ、費用も安くすむので、社長(会社)に提案してみました。予約も簡単にできたので全員が協会けんぽの健康診断を受けるようになりました。
当社は、まず従業員のヘルスリテラシー(健康に対する知識・理解力)を向上させ、その後一人ひとりに受診を促す声かけをして健診受診の大切さを知ってもらっています。
その効果もあってか、今では受診率はほぼ100%になりました。
「喫煙」「飲酒」について何か働きかけをされていますか?
健康診断を受けたあとに特定保健指導の連絡が来て、何人か受けてもらったところ3人が痩せました。
とくに、3年前に保健指導を受けた社長が真っ先にダイエットを始めて15キロ痩せました。何人かは社長から刺激を受けて、生活習慣を見直し始め、最後まで保健指導に残った人は「俺だけ?」みたいになって、必死に腹筋していました(笑)。
3年もダイエットを続けられる方はなかなかいません。3年だとやっぱり1回リバウンドしてしまう方が多いので、痩せた状態が続いているというのは、周りの環境や声かけで、成果を褒められるという体験がすごくいいのかなと思います。
当社でも社員の意識はだいぶ変わりました。協会けんぽさんが実施している健康講座※も積極的に活用しています。最初は誰も来ないんじゃないかと思っていたら多くの社員が集まり、 一人ひとりの健康意識はかなり高まったと実感しています。
※健康講座…健康保険委員が在籍している事業所が利用できる職場の健康づくりに関する講座
健康事業所宣言は難しくない
とにかく「宣言」&社員に「公表」してみよう
健康事業所宣言をしようと思ったきっかけは?
社長が「健康経営優良法人」のマークを取得するために必要な協会けんぽの「健康事業所宣言」をすると言いだしたことがきっかけです。建設業界は「3K(きつい・汚い・危険)」といわれることもあり、正直若い求職者から不人気なんです。健康事業所宣言をして当社のイメージアップに繋げたいという社長の思いから、この取り組みを始めました。
「健康経営優良法人」の認定を受けると名刺にロゴマークを使うことができるのですが、名刺交換をしたときに、「健康経営優良法人」のマークを知っている人からは、「健康管理に積極的に取り組まれていますね」って言われたり、イメージは良くなっている実感があります。まだ求人への活用には至っていませんが、これから、長い目で見ていこうかなと思っています。
知り合いの会社が宣言しているのを知って、当社でもできるかなと思いました。
健康事業所宣言をすると会社としても目標ができるし、社員にも積極的に働きかけるようになります。とりあえず宣言して、やってみることだと思いますよ。
健康事業所宣言をしてみてどうでしたか?
宣言したら、さらに社員に公表することが大事です。公表しないと、どんな取り組みであっても会社が勝手にやっているだけと社員から他人事のように思われて、みんな動いてくれません。 とくに当社の場合は、健康管理なんて自分だけの問題と思っている人が多い。作業スケジュールなどはみんなで分担して組んでいるので、誰かが病気で休むと他の人にすごく負担がかかるんですよ。そういうことを、もっとみんなが意識して、自分の健康は自分だけの問題じゃないという意識改革を促すことも必要です。
社員全員のSNSのグループを作って、そこにいつも社長が健康に関することでやりたいことを発信したり、健康診断の受け方などを共有するようにしています。普段現場に出ていて顔を合わす機会が少なくても、SNSを通してコミュニケーションを取り、全社員で取り組めるようになりました。社長は、「社員=家族」と考え、長く働いてもらいたいし、みんなに働いてもらえないと現場も動かないと思っているので、その社長の意識が、みんなにも伝わって、ちょっとずつ変わってきたのかなと思います。
未来の建設業界も、健康を大切に
今後の課題は「有所見者の再検査へのフォロー」
有所見者の再検査へのフォローができていません。いま、有所見者には一律に再検査を受けるようにアナウンスはしているんですけれども、個々に追っかけてフォローしてないので……もっと積極的にやっていかないといけないと思っています。
他の会社のケースですが、「近くの病院に行きなさい」と指示される場合もあると聞いています。会社が、その受診の時だけ時間休を取らせてあげるような配慮をする方法もあります。全ての健診の結果に対応するのは難しいと思うので、まずは、どれか項目を特化して受診の確認から声をかけてみられてもよいのではないでしょうか。会社として健診後のフォローはとても大切です。
労働力を確保・定着するためにも「健康管理」「職場環境の改善」は必須
当社は労働時間等労働環境も含めて、トータルで健康管理に取り組みたいと考えています。労働時間を見直して、「効率化していく=社員の健康管理」に直結すると思います。
また、できるだけ作業を標準化し、若い人でもすぐに仕事を覚えられるようにして、作業の負担を減らしたいです。
当社の2割くらいは事務職の女性で座りっぱなしです。狭いですが、工夫して休憩室を設けて休める環境を作ったり、会社の外にも出歩いてもらって運動する機会をもつなど、健康対策をやっていこうと思っています。
年代を超えてコミュニケーションを図り、メンタルヘルスケアも
当社は少人数なので年配の人と若い人が現場で一緒に作業しています。ときどき年配の職人さんに厳しい言い方をされて若い人が辞めていくこともあるんです。社長が年配者に声のかけ方を指導したり、懇親会の席などコミュニケーションの場を作るようにしてくれています。
当社は年齢構成的には恵まれていてバランスはいいです。
ただ、さっき言われたように、やはりベテラン社員と若手社員にギャップがあります。そのため、社員にどういうふうに自分の感情をコントロールするかをわかってもらうために、アンガーマネジメント講習を実施するなど、メンタル的なトレーニングも行っています。
まだ、宣言していない建設業界の事業所に向けて
ひとことお願いします!
とにかく、健康で70歳まで頑張って働いてもらいたい。建設業のいいところは、自分の作ったものがはっきり目に見えるんですよ。その辺は非常にやりがいがあるので、若い人に集まってほしい。
若い人にね、やっぱり入ってきてほしい。「建設業は健康に頑張ってます!」って、こうした健康事業所宣言を広めたいです。
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さらに!
認定ロゴマークの
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健康宣言された京都府内の事業所様は、健康経営企業の認定ロゴマークをダウンロードしていただけます。
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