生活習慣病予防のひとつとして、「運動すること」は、とても大事。
まずは始める、そして続けるためのポイントを、糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防および、予防医学について研究されている坂根直樹先生に、クイズ形式で解説いただきました。

第一問
「11月14日、今日は何の日?」

  • 1世界糖尿病デー
  • 2いい石の日
  • 3いい医師の日

11月14日は「世界糖尿病デー」です。糖尿病という病気は血糖を下げるインスリンというホルモンが膵臓から出なくなったり、その働きが悪くなって起こる病気です。この11月14日は、インスリンを発見し、ノーベル賞も受賞したカナダのバンティング博士の誕生日で、1991年にIDF(国際糖尿病連合)とWHO(世界保健機関)が制定し、2006年に国連により公式に認定されました。青い丸をモチーフにした「ブルーサークル」がキャンペーンに用いられています。このブルーは、国連やどこまでも続く空を、輪は団結をあらわしています。

ちなみに、11月14日は「いい(11)い(1)し(4)」の語呂合わせから、「いい石の日」の記念日でもあるそうです。

それなら、「いい医師の日」もありそうですが、残念ながら、その記念日はありません。ただし、「ひと・ひと(11)いし(14)」の語呂合わせから、医師が人と人をつなぐとの思いから「医師に感謝する日」にもなっています。今年の世界糖尿病デーのテーマは「糖尿病ケアにアクセス」するです。糖尿病予防や治療のために、適切なアドアイスをしてくれる人を見つけておくといいですね。

クイズの回答 
1.世界糖尿病デー、
2.いい石の日

第二問
「糖尿病3大合併症の覚え方は?」

  • 1しめじ
  • 2えのき
  • 3しいたけ

糖尿病を駅に例えると、正常駅、予備群駅、糖尿病駅、合併症駅になります。空腹時の血糖値が100mg/dLを超えると、予備群、126mg/dLを超えると糖尿病になります。

図1 糖尿病を駅に例えると

糖尿病の3大合併症は手足のしびれやこむら返りなどの神経障害、網膜症などの眼や腎症です。神経障害、眼、腎臓の頭文字をとって、「しめじ」と覚えておくといいですね。この3大合併症は神経、眼、腎臓など細い血管が集まっている場所で起こります。

糖尿病は「血管の病気」とも言われます。細い血管だけでなく、足、脳、心臓の太い血管にも影響を与えます。そのため、足の壊疽、脳梗塞や虚血性心疾患になるリスクも高まります。これは糖尿病になる一歩手前から、大きな血管の動脈硬化は始まっています。壊疽(え)、脳梗塞(の)、心筋梗塞(き)その頭文字をとって「え・の・き」と覚えておいてもいいですね。

ちなみに、きのこ類には食物繊維だけでなく、ビタミンDが豊富に含まれています。糖尿病は骨粗鬆症や骨折になるリスクも高いので、きのこ類は積極的にとっておきたいものですね。

図2 糖尿病3大合併症は「しめじ」

クイズの回答 
1.しめじ

第三問
「糖尿病やメタボを予防する運動は?」

  • 1ウォーキングなどの
    有酸素運動
  • 2スクワットなどの
    筋力トレーニング
  • 330分に1回、
    立ち上がる

「運動は薬」という言葉があります。運動は、細胞のエネルギーを調節しているAMPKというたんぱく質を活性化して、肝臓での糖の取り込みを促進します。これは糖尿病薬のひとつであるメトホルミンも同じ作用がありますので、まさに運動は薬なのかもしれません。

それでは運動はどのくらいすればいいのでしょうか。ウォーキングや自転車こぎなど、軽く汗をかく程度の中ぐらいの強さの有酸素運動の目標は「週に150分」です。週に150分ということは、1回30分の運動を週に5回(30分×5回=150分)とか1回50分の運動を週に3日(50分×3回=150分)が目安となります。歩きやすい靴や動きやすい服装にする、歩数計・スマートウオッチを装着する、音楽を聴きながら歩く、家族や知人と一緒に歩く、犬と散歩する、お気に入りのコースを作るなどして歩く時間が増えるといいですね。

スクワット、腹筋、腕立て伏せなどのレジスタンス運動は、月曜・水曜・金曜など週に3回が目標となります。

働かざる者食うべからず→動かざる者食うべからず

座っている時間が長い人ほど糖尿病やメタボになりやすいことがわかっています。太りやすい人の部屋は動かなくていいように座椅子やクッション、手元にリモコン、手の届く範囲に必要なものを置いています。「働かざる者 食うべからず」という言葉がありますが、人偏をとると「動かざる者 食うべからず」という言葉になります。

「高栄養→体重増加→ゴロゴロ→何かをつまむ→高栄養・・・」といった肥満サイクルに陥ります。このサイクルから脱出するために、ゴロゴロしないように、30分に一度は体操や足踏みなど軽い運動ができたらいいですね。

クイズの回答 
すべて正解

第四問
「運動する時間がない人におススメなのは?」

  • 1細切れ運動
  • 2細切れ肉
  • 3細切れ睡眠

外来で話をきいていると「運動する時間がない」と話される人がいます。こういった人は「30分以上運動しないと、脂肪が燃焼しにくく、運動したことにならない」と誤解しているのかもしれません。

実は、10分の運動を3回や15分の運動を2回に細切れにして運動するのは、1回30分の運動するのと同じ減量効果や体力向上効果が得られます。1日の中で隙間時間をみつけて運動することが減量や体力向上につながります。

10分は約1,000歩になりますので、プラス3,000歩を目安にするとよいかもしれません。また、公園など5分で行ける場所を探しておけば、往復で10分になります。隙間時間をみつけたら、細切れに運動してみるものいいですね。

クイズの回答 
1.細切れ運動

コラム

運動習慣と
糖尿病リスクの関係

<健診(問診)で分かった運動習慣の代表例>

  • ・(運動習慣)1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施しているか
  • ・(歩行、身体活動)日常生活において歩行または同等の身体活動を1日1時間以上しているか
  • ・(歩行速度)ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩く速度が速いか

このうち、糖尿病リスクと最も関連が強いのは「歩行速度」。
歩行速度が遅い人は、速い人と比べて男性は1.25倍、女性で1.44倍の糖尿病リスクがあることが分かります。
また、協会けんぽ京都支部は全国的にみると、良い運動習慣が多い地域ではあるのですが、働き世代のデータを業態別に分析すると、業態別の特徴も見えてきました。
分析の結果、糖尿病リスクが高い業態の上位は、運輸業と建設業(男性)。この業態の歩行速度を見てみると、他の業態よりも遅い人が多いことがわかりました。(歩行速度の遅い人、運輸業:1.33倍、建設業:1.14倍 ※いずれも男性)
協会けんぽ京都支部では、この他にも、業態別の働き方の違いによる健康課題のデータ分析を行います。

※協会けんぽ京都支部、健診・問診データより

第五問
「テレビを見る時間が長いと太る理由は?」

  • 1ゴロゴロするから
  • 2何かをつまむから
  • 3食欲がわくから

患者さんに「どんな生活をしていますか?」と尋ねると、「テレビの守りをしています」と答えられる人がいます。多くの研究から、テレビを見ている時間が長い人ほど、糖尿病や肥満となるリスクが高いことが知られています。その理由として考えているのは、テレビを見ながらゴロゴロしていること、テレビをみながら何かをつまんでいることに加えて、食欲がわくことが考えられています。

確かに、グルメ番組や旅行番組などの食べるシーンをみていると、食欲がわいてきますね。そのため、テレビの視聴時間をできるだけ減らすことが、体重管理に役立つかもしれません。朝起きてすぐにテレビのスイッチを入れない(テレビを時計代わりにしない)、食事中はテレビのスイッチを切る、テレビを見ながらゴロゴロしない(きちんと座ってみる)、ながら食いをしない、部屋を出るときはテレビを消す、グルメ番組はみない、コマーシャルになったら他の番組に変えずに立ち上がって軽い運動をする、テレビを寝室に置かないなどの工夫ができますね。

クイズの回答 
すべて正解

第六問
「運動習慣のある人は何割?」

  • 110割
  • 25割
  • 33割

「国民健康・栄養調査報告」(厚生労働省、令和元年)によると、20歳以上の運動習慣のある人は約3割(男性33.4%、女性25.1%)です。子どもの頃は学校の体育や部活などで定期的に運動していた人も、社会人となってから運動習慣がなくなったのかもしれません。運動していない人に「どうして運動しないのですか?」と尋ねると、色々な言い訳をされます。

運動する時間がない、1人でなかなか歩けない、やってみるがなかなか続かないなどと答える方がおられます。そういった人は運動の変化ステージの準備期に入っているので、時間がなくてもできる運動を紹介したり、一緒に運動するサポーターをみつけるといいですね。中には、「暑くて運動できない」という人がいます。ところが、涼しくなってもなかなか運動を始めません。冬になると「寒くて運動できない」と天候のせいにされます。

これは運動の変化ステージの関心期になります。運動しないのは天候のせいと他人事のようです。天候に左右されない運動療法をためしてみてもいいかもしれませんね。

クイズの回答 
3.3割

参考文献 
坂根直樹:糖尿病ストップ大作戦、東京法規

京都ではたらく皆さまは始めています。協会けんぽ京都支部「運動をはじめる、続ける」メソッド

協会けんぽ京都支部の
事業所向け健康講座

「運動」をテーマにした講座が充実。
従業員の「運動習慣」を見直すために活用してみませんか?

さらに詳しく知る

世界糖尿病デー(11月14日)、世界肥満デー(3月4日)
だから..と言わず、

今から、居間から、いちばんの薬「運動」をはじめませんか?
まずは、健康の現在値(いま)の確認から。

京(きょう)から「健康事業所」になりませんか?参加企業募集中!

健康事業所宣言エントリーシートを
ダウンロードする