「健診でみえた」課題の要因はどこにあるのでしょう? 特定保健指導は普段の暮らしを見直すことから始まります。そして、「健康のための行動計画」を立て、あなたが「無理なく目指せる」体になるために、どのようなアクションを起こせるかプロと一緒に考えていきます。メタボさん、またその予備群かもしれない方は「健康のための行動計画」、健康の曲がり角を迎えた40代から考え始めてみませんか?

田中さん

44歳男性、幼少期から大学卒業まで野球をやっていたので体力には自信あり、普段の生活で不健康を感じることはないそうです。デスクワークが多く、最近はからだを動かす機会が減っている。朝昼晩三食と、仕事中の間食、夜食にスナック菓子なども食べている。
今回は、メタボ予備群にデビューしてしまった田中さんと、「大好きな野球をずっと続けられる “動ける体”づくり」を目指してどんなアクションが起こせるのか、健康づくりのプロと考えていきます。

協会けんぽ「特定保健指導」とは

対象…健診結果により、「メタボリックシンドローム」のリスクのある40歳から74歳までの方

内容…保健師や管理栄養士などの専門職が3か月~半年間、手紙や電話などで継続して、内臓脂肪の蓄積に着目した生活習慣病予防のための健康増進に取り組めるように、リスクに応じたサポートをします。生活習慣病の予防には、その原因となる内臓脂肪を減らしていくことが重要です。実施方法…健診を受けた当日に面談を受けることも可能(*1)。30分程度の面談で“健康のための行動計画”を一緒につくります。 (*1)健診機関ごとに対応が異なります。詳しくは健診機関または協会けんぽにお問い合わせください。

全国健康保険協会(協会けんぽ)京都支部
企画総務部 保健グループ

保健師中村 江理

病気やケガの治療等、医療に関する知識を有する“看護師”資格と、病気やケガを未然に防ぐ「予防医療」の知識を有する“保健師”資格を保有しており、その専門性を活かした業務を行っています。
普段は保健部門で健診・保健指導に関する企画調整、保健指導の実施、協会けんぽ保健師・管理栄養士のスキル向上のための研修などを担当しています。

ちょっと数値が悪いけど、「でも大丈夫」とみなさん思っていらっしゃいます。

田中さん

なぜ、こんな案内状が届いたか分かりません。会社の健診担当に「受けてきなさい」と言われたから、来ました。

田中さんは、(A)腹囲82.1㎝、(B)BMIは25.6であり、少し高くなっており、善玉コレステロールであるHDLコレステロールは37mg/dlと基準値より低く、また、拡張期(最低)血圧は86mmHgと基準値より高い診断結果だった。

田中さん

持病があるわけでもないし、ふだん気になることも特にないですよ。

中村

今回の健診で黄色信号になりました。治療レベルではないんですけど、いわゆるメタボ予備群なんです。前回と健診結果を比較して、数値の変化が気になります。

生活習慣病のリスク因子

田中さん

えっ…今のところ体がしんどいとか、特にそういうことはないですけど…なにが悪かったんですか?

中村

気づきづらいんですが、生活習慣や加齢で、体の中も変わるものなので、いま、注意をすることが大事なんです。例えば、血圧ですが…上の血圧は良いのですが、下の血圧が86というのは、ちょっとよくないんです。

田中さん

どういうことですか?

中村

血圧が高い状態が長く続くと血管はいつも張りつめた状態となって、血管が硬くなった状態である動脈硬化につながりますので、将来心筋梗塞や脳卒中などを発症する可能性が高い、ということなんですよ。

田中さん

脅かさないでくださいよ…。

普段の暮らしの振り返りから始める、「特定保健指導」

中村

血圧が高い状態が長く続くと血管はいつも張りつめた状態となって、血管が硬くなった状態である動脈硬化につながりますので、将来心筋梗塞や脳卒中などを発症する可能性が高い、ということなんですよ。

まず、暮らしのアンケートを回答。田中さんは1日3食しっかり食べていて、これは良いことなのですが、間食や飲み物などで、成人男性のエネルギー必要量を超過していることが分かります。さらにデスクワークが多く、運動もしていないそうです。

田中さんの暮らし

  • ・お肉が大好き。朝はパンにマーガリンをたっぷり。昼と夜はお米が中心。
  • ・お昼は会社の近くの居酒屋などの定食が多い。
  • ・夜食のデザートにはアイス。スナック菓子を一袋食べてしまうこともしばしば。
  • ・電車で通勤しており、一日だいたい4,000歩くらい歩いている。

中村

田中さん。このままいくと、メタボまっしぐらです。特に食生活をみると、脂質の存在が目立ちますね。

思い当たる節、ありませんか? みなさん実は、気付かないふりしてるだけかもしれないです。

35歳を過ぎると、生活習慣病の有病率が急激にあがるという分析結果も。体調の変化が少しずつ顕在化してくるため、健康に気を配る方も増えてくるようですが…。

35才あたりから、生活習慣病の有病率が飛躍的に上昇する
年齢階層別 京都支部加入者の生活習慣病医療費と有病率:京都支部加入者のデータ

協会けんぽ京都支部調べ

田中さん

やっぱりそうですよね…うすうすよくないとは思ってたんですけど…。どんな風に改善したらいいのかよく分からないんですよ。

中村

今日お越しいただいたのは、そこをしっかりつかんでいただくためです!
ではまず…食生活をみてみましょう。普段の活動量に比べてお食事の量がかなり多いです。それから糖質もですが、特に脂肪分をかなり多く摂られているのかなという印象です。
健診結果では脂質、特に善玉コレステロール(HDL)が低くなっていることと、悪玉コレステロール(LDL)が高くなっていますので、血液中の余分な脂がうまくお掃除されていない可能性があります。また、田中さんは腹囲が基準値を超えていますので、内臓脂肪が蓄積しているといえます。

田中さん

コレステロールの善玉と悪玉があるということは聞いたことあります。なにがよくないんですか? 油っこいものは好きではないつもりなのですが…。

中村

実は、油っこいものを食べているつもりはなくても、間食なども含めて無意識に油が入ったものを食べてしまっていると思います。LDL(悪玉)コレステロールを減らして、HDL(善玉)コレステロールを増やしていきたいのですが、それには食事や運動など普段の習慣がすごく大事なんですよ。

田中さん

食べ物は何に気を付けたらいいですか?

中村

脂質が含まれる食べ物の量に気をつけてもらいたいですね。朝食でパンに塗っているマーガリン、間食で食べるクッキーとかマドレーヌとかを全部やめるというのはハードルが高いかもしれないので、もう少し量を減らしていきましょう。あとは油の種類に気を付けてもらいたいです。たとえば、飽和脂肪酸が含まれる食品を摂りすぎないように注意ですね。

田中さん

油に種類があるんですか。飽和脂肪酸というのは?

中村

飽和脂肪酸とは肉やバターに多く含まれている脂で、摂りすぎると悪玉コレステロール(LDL)が増えやすくなってしまうので、食べる量や頻度に気をつけてもらいたいです。一方で不飽和脂肪酸とは、植物性の油や魚の油に多く含まれるもので、血圧を下げたり悪玉コレステロール(LDL)を減らす作用があります。不飽和脂肪酸が多く含まれている青魚の焼き物を選んでもらうと、良いと思います。
お惣菜を選ぶ時は、今までは豚の角煮などを選ばれていたら、魚のちょっとあっさりしたようなものを選んでもらいたいなとも思います。味覚って慣れみたいな部分もあるので、まず、一食だけ変えてみるのでも結構ですし、そういう味付けにちょっと気を付けてもらうような習慣にしていくと、この先も健康に気をつけた食事が続けられると思います。

中村

血圧もみていきましょう。下の血圧(拡張期血圧)が気になりますね。
今は特に問題無いと感じていても、放置すると徐々に悪化する可能性があります。特に塩分の摂り過ぎは血圧に影響します。食生活の中で、“こういうことなら少し変えていけそう”というところから変えてみましょう。さきほどのマーガリンを塗ったトーストですが、パンやマーガリンには塩分が入っています。マーガリンは薄めに塗ると、脂質と塩分、両方を減らすことができますよ。それから塩分についても、できるだけ味が薄いものにするように心がけていただいたほうがいいかなと。お昼の定食の惣菜は結構味付けが濃いめのことが多いです。ポテトチップスもかなり塩分が多く含まれていますからね。

COLUMN|「血圧が高い」ってなに?

血圧は、血管が硬くなってきたり、狭くなったりすることで高くなります。原因としては、肥満や塩分の過剰摂取、加齢やたばこが挙げられます。また、血圧の上下の幅が狭くなっていると血管の柔軟性が損なわれている可能性があります。高血圧を放置すると血管が破裂するなどの命にかかわる病気のリスクが飛躍的に上がります。
京都支部の加入者には、このリスクのある方が約10万人いらっしゃいます。※“高血圧症”に該当する方。

「今後も“動ける体”でいたい」目標につなげるアドバイス。

田中さんは40代。この先の健康を左右する大事な年代です。食生活や運動習慣について、ご自身が無理なく、自発的に長続きできるところから少しずつ改善していけるように目標を立てます。

田中さん

血圧が高いってことですが、とりあえず、毎食1品ずつ変えていくとか、今はそんなぐらいでいいですか。

中村

そうですね。そして、運動も必要です。例えば、これまでの生活に加えて20分多めに歩くとだいたい2000歩プラスになるので、まずは2週間、それを目標にしましょう。例えば、仕事帰りの10分、少し遠回りして歩くようにしたり、土日にご家族とスーパーまで歩いて一緒に買い物に行ったりしてみてはいかがですか? 大股でどんどん歩く方がエネルギー消費も高くなるのでお勧めです。

田中さん

はい、まずは2週間ですね、わかりました。最近、学生までやっていた野球を再開したんですけど、半年後に草野球の大会があるので、動けるようになっておかないといけないし…いい機会なので頑張ってみます。

中村

それでしたら、“動ける体づくり”も意識したいですね。
例えばタンパク質が不足すると筋力・体力が落ちてしまいバテやすくなったり、免疫力が落ちて風邪を引きやすくなったりすることにつながるので注意してほしいです。
それからビタミンです。炭水化物と脂肪を効率よくエネルギーに変えるビタミンB群も、豚肉などからしっかりとるようにしましょう。さらに、体内での酸素の運搬をする鉄も不足しないように心がけるといいですよ。
それも“摂りすぎず”、“バランスよく”が大事です。

田中さん

3か月後まで頑張れるかな…でも、見守ってもらってるって感じがする。なんか受けてよかった。

協会けんぽ「特定保健指導」では、まず目標をたて、それをすぐに始め、そして続けられることをアドバイスします。せっかく受けにいった健診。健診結果をみてそのままにするのではなく、「健康のための行動計画」に活かしませんか?

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特定保健指導について

協会けんぽ京都支部の保健師と管理栄養士が、みなさんの健康をサポートします。

保健師と管理栄養士は、事業所の訪問などにより、健診結果に基づいた特定保健指導や、面談後の電話や文書による支援など、健康診断から保健指導という一貫した流れの中で対象者様の健康づくりをサポートしています。

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