健康増進のプロが伝える、健康のススメ。

「からだを知ること」のポイントは
「過去と“今”、そして“未来”を知る」ことから。

そもそも「健康」ってなんでしょう?
最近、ヘルスリテラシーの重要性が話題になっています。
ヘルスリテラシーとは “健康に関する情報を理解し活用する力”のことです。ご自身の健康を維持し、改善するための知識を得て、的確に行動することができる能力がヘルスリテラシーです。
しかし、健康についてゆっくり考える時間を持つ機会は、少ないのではないでしょうか。
一年に一度受ける「健康診断(健診)」。このタイミングで考えてもらいたいことがあります。数多くの「健康」づくりサポートを行っている“健康増進のプロ”である保健師に聞いてみました。

全国健康保険協会(協会けんぽ)京都支部
企画総務部 保健グループ

保健師中村 江理

病気やケガの治療等、医療に関する知識を有する“看護師”資格と、病気やケガを未然に防ぐ「予防医療」の知識を有する“保健師“資格を保有しており、その専門性を活かした業務を行っています。
普段は保健部門で健診・保健指導に関する企画調整、保健指導の実施、協会けんぽ保健師・管理栄養士のスキル向上のための研修などを担当しています。

健康でいることのポイントは、“からだを知る”こと

はじめに、“健康”とは、なんでしょうか?

“健康”とは、自分らしくいきいきと生活できている状態のことです。
ただ、“健康であること”と“生活に支障がないこと”は同じではありません。“生活に支障がないから健康だ”と思い込んでしまうと、知らず知らずのうちにからだに起こっているいろいろな“兆し”を見過ごしてしまいます。
“健康”でいることのポイントは、その“兆し”を含めて、自分の“からだを知ること” と考えています。
一年に一度の「健康診断」は、“兆し”を発見できる、とても大事な機会なんです。

具体的には、どのような“兆し”がありますか?

症状はなくても、過去の健診結果からの変化や、異常な所見のことを指します。一番こわいのは、“自覚症状がない”ということで、大きな病気の発見を逃すこともあります。
「加齢」とか「今年はたまたま」と自己判断されてしまう方がいらっしゃいますが、こういった方は“兆し”を見過ごしやすいですね。

健康診断のポイント -変化をとらえること-

健診では特に何を診ようとしているのでしょうか。

重視しているのは生活習慣病です。自覚症状がないまま進行するので、症状があらわれた時には日常生活に支障が生じてしまうことがあります。生活習慣病やがんの発症には、喫煙や食事、運動などの生活習慣が大きく影響しています。そのため、そのような生活習慣の項目にも特に着目しています。

とはいえ、仕事や日々の生活に追われていると、年一回でも受診の機会を逃してしまったり、一年ぐらい飛ばしてもいいか…と考えて、やめてしまったりする人もいると思います。

そうですね。毎年は受けなくてもいいかなって、思われている方がいるようですが、からだの中は毎日少しずつ変化しています。例えば、血液の中の赤血球は約120日で生まれ変わっていて、日々変化するので、現在と1年前のからだは同じではありません。
そして、からだの変化を1年以上見逃してしまうことは“怖いこと”であるとご理解いただきたいです。

ちなみに、人のからだは1年でどの程度変化するのでしょうか。

例えば「がん」の進行の速さって、考えたことありますか? がん細胞が、約1cmのかたまりになるのに15年かかるといわれています。しかし、1cmが2cmになるのは、なんとたったの1年半なんだそうです。あるタイミングを境に、爆発的に進行したりするものですから、年1回健診を受けるということはとっても大切なのです。
若い方は検査結果が陽性になる割合は低いかもしれませんが、危険因子が見つかれば早めに経過観察や治療してもらったりすることは、特に大事ですね。

若さや健康を過信してはいけないということですね。ちなみに、各年代で違うことはありますか?

50代くらいになると健康に気を付ける方が多くなるように思いますが、40代くらいまでの方の場合は、仕事や家族のことでかかりきりになっていたりと忙しい時期なので、自分の健康管理が後回しになるかもしれません。ですが、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がんなどは一般的には40代から急に発生する確率が高くなるので注意してほしいです。子宮頸がんは20代からも発症のリスクが一定程度ありますから気を付けてもらいたいです。
協会けんぽではこのようながん検診の項目も含んだ健診費用の補助をしていますので、ぜひ活用いただきたいですね。

健康診断結果の見方

健診結果って、分かりづらいです。専門用語が多いし数値の見方がよくわからないのですが

まず、基準値の範囲内かどうか見てください。次に、前回と比較して、その変化を見ていただきたいですね。毎年、基準値の範囲内であっても、年々上がっている、もしくは下がっている場合は要注意です。

特にどの数値に注意して見ればいいのでしょうか。生活習慣病に注意したい場合の指標となる数値を教えてください。

みなさんご存じのメタボリックシンドロームは、腹囲とBMIを重視しています。例えばお腹まわりが出てくると内臓脂肪がたまり出しているサインなので、高血圧、高血糖、高脂質になる“兆し”といえます。
また、特に注意してもらいたいのは、危険因子の“組み合わせ”です。例えば、日本人の死因2位である心疾患の発症危険度を見てみましょう。肥満、高めの血圧、血糖、脂質などの「危険因子」は、その個数に応じて増大し、3つから4つに増えた途端約36倍になるんです。(危険因子0と3~4の対比:下図)

たとえば、生活習慣を見直して、努力次第で良くなる数値とか、逆に悪くなりやすい数値があれば教えてください。

個人差もありますが、例えば食事では炭水化物を減らすと体重が下がりやすく、甘いものも減らすと血糖値がちょっと下がったり、習慣による変動がみられやすい項目はあります。かといっていずれも減らしすぎはよくありません。バランスを心掛ける必要があります。
あとは、洋食から和食中心のメニューに変えた場合は、LDL(悪玉)コレステロールが下がる傾向があります。使う油の種類が変わってきますし、調理方法が蒸し物や煮物中心になるためです。
他にも、普段から運動をする方は生活習慣病だけでなく大腸がんや骨粗しょう症になりにくいことがわかっています。
そういうふうに生活を意識するようになれば、健診結果が変わってきます。

飲酒の習慣や飲む量はどうですか?

毎日お酒を飲んでいた人が、休肝日を作るなど日々の酒量を大幅に減らした場合はγ-GTP*という数値が減ってきます。逆に、お酒の付き合いが増えると、食べる量が減ってもγ-GTPと中性脂肪が上がってきたりします。わたしたちが行っている特定保健指導(健康相談)では、そういった生活習慣と結果を複合的に確認させていただき、わかりやすくお話ししています。

*γ-GTP(ガンマジーティーピー) たんぱく質を分解する酵素の一種。飲酒量が多いときや胆道系疾患などで値が上昇し、肝機能の指標とされる。アミノ酸の生成にかかせない酵素です。胆道から分泌され、肝臓の解毒作用に関わっています。
肝臓から処理済みの老廃物は胆管を通して十二指腸に排泄されますが、胆道が胆石やがんなどによって詰まると、γ-GTPなどの酵素や老廃物が逆流して、血中の濃度が上がります。
(厚生労働省 e-ヘルスネットより抜粋引用)

見た目や体格がよければ健康、ということではない

普段から筋トレや、ジムに通うなど健康への意識が高くても、健診に行かない方がいるようです。そういう人が注意すべきことはありますか。

いわゆる『ムキムキになる』ための食事や運動と、生活習慣病を予防するための食事と運動は違うので注意です。ムキムキになろうとすると、食事のバランスが悪くなる場合があります。過剰なタンパク質摂取や過剰な糖質と脂質制限をしてしまいがちですよね。また、“急激な減量”を行ってしまう方も見られます。
生活習慣病予防のための減量は短期間ではなく長期的な視点で行うのが特徴です。特定保健指導では、おひとりおひとりの健診結果に合わせ、食事のバランスについて話をした上で、急激な筋力トレーニング・減量をしないようにアドバイスします。
からだの状態を確認した上で、トレーニングや減量に励んでもらえるといいと思います。

健診の数値がそこまで悪くないような方が注意すべきことはありますか?

もちろん、今のうちから日ごろの生活習慣を意識することが大切です。健診結果の見方としては、やはり先ほどもお伝えしたように、基準値を超えている項目が“複数”あると心疾患や脳卒中等のリスクが高まるので要注意。ポイントは複合的に見ることです。お一人でチェックすることが難しくても、協会けんぽの健診を受けていればそのお手伝いをすることができますので、協会けんぽの健診をぜひ受けていただきたいです。

一年に一度の健康診断、健康の現在値(いま)を確認する

人生100年時代、ヘルスリテラシーを高め健康を意識する事は、生きがいをもって長く暮らすことへの備えとなります。
過去と現在値(いま)のご自身のからだのことを知り、未来の自分に繋げることのできる能力…それがヘルスリテラシー。そのヘルスリテラシーを高めるための入り口として、年一回のからだの定期確認「健康診断」を受けていただきたいと思います。

協会けんぽ京都支部の保健師と管理栄養士が、みなさんの健康をサポートします。

保健師と管理栄養士は、事業所の訪問などにより、健診結果に基づいた特定保健指導や、面談後の電話や文書による支援など、健康診断から保健指導という一貫した流れの中で対象者様の健康づくりをサポートしています。

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